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少しずつ時間ができたので溜まった記事を更新していきます。


今回はマイナーなオニクワガタ属の1種であるトリアピカリスオニクワガタの飼育記事です。1サイクル回したので、一旦まとめ。

オニクワガタの仲間であるPrismognathus属は個人的に非常に好きで、現在も6種類ほど飼育しています。


■トリアピカリスオニクワガタについて


オニクワガタの仲間は東南アジアを中心に約30種ほどが生息しており、大きく分けて、いわゆる日本のオニクワガタ系とキンオニクワガタ系の2タイプがいると思うのですが、ほとんどが後者です。今回紹介するトリアピカリスオニクワガタはどちらかというと、キンオニクワガタ系に属するタイプと考えられます。

どちらかというとというやや曖昧な表現を使用しているのは、このトリアピカリスオニはオニクワガタ属の中でも数少ない、長歯型が存在する種類だからです。

ちなみに、本種以外に顎が湾曲して伸びる(長歯型と言えるような)オニクワガタはプラティケファルスオニクワガタ(Prismognathus platycephalus)、カスタネウスオニクワガタ原名亜種(Prismognathus castaneus castaneus)、カスタネウスオニクワガタミャンマー亜種(Prismognathus castaneus sukkiti)、ミヤシタオニクワガタ(Prismognathus miyashitai)などです。


和名:トリアピカリスオニクワガタ

学名:Prismognathus triapicalis Houlbert, 1915, comb, nov.

分布:中国(チベット自治区、四川省、雲南省、貴州省)/ Tibet, Sichuan, Yunnan, Guizhou, China

サイズ:♂24.0~37.3ミリ、♀19.6~21.9ミリ

珍品度:少ない☆☆☆☆


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中国西部に生息するオニクワガタですが、過去に入荷した個体はほとんど四川省の個体だったように思います。


大図鑑によると、「♂は褐色~黒褐色で、かすかに唐金色をおびる。頭部は中央部で浅く逆三角形状にくぼみ、側縁の前方はほぼ直角に小さく角ばる。頭楯は横に長い四角形状で、両端はやや尖る。長歯型の大あごは細長く前方に伸び、頭部の長さの約2倍で、ゆるやかな弓状に湾曲し、先端部で上下に二又に分かれ、上方のものはやや短くて先端は鋭く尖り、下方のものは先端が前後に二又に分かれ、個体によっては、二又部分の間に1~数本の小内歯が並ぶ。大あごの基部にごく小さな1~2本の三角形状の内歯が現れる個体もある。♀は黒褐色で光沢があり、上翅がやや長い。」と記載されています。(『世界のクワガタムシ大図鑑』, 2010, 藤田宏 P166より抜粋)


以下は四川省のマップです。

四川省は中国の中でも貴州省や海南島あたりと並んで比較的昔から生体が入荷している地域ですね。ただし、本種が入ってきたという記録はここ5年ぐらいの話のような気がします。近年はチベット自治区当たりの方がフォーカスされてる感があるので、入荷が減っている産地となりつつあります。

そもそもの話なんですけど、オニクワガタの野外品ってほぼ例外なく寿命が短いので、輸入が難しいんですよね。近場である台湾のオニクワガタですら、ほとんど入ってきません。もっと日本のキンオニ寄りの種類(例えば一昨年入荷のあったクラッペリッチオニなど)は低温環境であれば比較的寿命があるので、入れやすいかもしれません。それでもインド方面はかなり厳しいでしょうね。入ったら奇跡。

なお、2019年はミヤシタオニが1♀入ってましたが、入荷して1週間程度で落ちたみたいです。



このトリアピカリスオニですが、実はオニクワガタ属の中では、日本から朝鮮半島にかけて生息するキンオニクワガタの次に大きくなる種類です。

(あくまで個人的な意見ですが)実際のところ、大型個体が見つかっていないだけで、40ミリ超の個体も存在すると思います。

キンオニの飼育レコードが40ミリ(多分今年更新されると思いますが)なので、実質最大種といっていいでしょう。


ちなみに、オニクワガタの中でも歪な形状の種類であるため、記載時はGonometopus属として1属1種で記載されたそうです。なお、♀の形状はほぼほぼオニクワガタなので、現在の区分は妥当なのでしょう。


この属に関しては、正直研究が進んでいない部分も多いと思いますので、今後の研究に期待ですね。

「BE-KUWA50号 インドのクワガタムシ大特集」(2014年, むし社)においても「世界クワガタムシ大図鑑」(2010年, 藤田宏)において掲載されていないブレッドシュネイダーオニクワガタ(Prismognathus bretschneideri)やパルブスオニクワガタ(Prismognathus parvus)、不明種などが図示されており、特にインド〜チベットにかけての研究はさらなる新種の発見があると思われます。

なお、このあたりのオニクワガタは現地では2,000〜3,500m級の標高で得られるとのこと(採り子もいないそう)。ネパールのアーチェルニセヒラタやチベットのプロメテウスミヤマもこういう感じの高標高に生息しているようですが、本当に海外の山脈ってすごいですね。

まぁ、前述したようにミヤマより寿命の短いオニクワガタに関しては、生体での入荷は不可能でしょうけど。



■2018年8月 幼虫入手


横浜のイベントにて購入。

金額は忘れました。


詳細はこちら


幼虫飼育は安定した羽化を目標に、無添加の1次発酵マットに500ccボトル、温度は20度で管理しました。



■2019年12月末 羽化


マットが乾燥気味だったせいか(マット交換は1回のみ)、かなり時間がかかりましたが、ようやく羽化してきました。

そして奇跡的にペアがそろいましたので、ブリードすることに。

正直諦めていたので、ここはかなり嬉しかったです。揃って羽化して初めてスタートライン。


本当にこのPrismognathus属というのは、寿命が最大のネックで、1か月の羽化ずれでも致命傷になりますので、安定して累代するにはうまく羽化時期を調整するか、ある程度数を抱えるしかないですね。


羽化した個体の紹介。冒頭の個体です。

幼虫期間が長かったおかげか、無事に長歯型が羽化してきてくれました。


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横から見ると、二又状の内歯が上に反り上がっているのがよくわかります。

本当にオニクワガタと思えないほど、立派な大あごです。

色彩は安定のゴールド。



そして、本当にカッコ良いですね。


次に♀。


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♀はオニクワガタっぽい♀ですね。

これもメスは黒いです。


トリアピカリスオニクワガタ

Prismognathus triapicalis Houlbert, 1915, comb, nov.

産地:中華人民共和国 四川省Mt. Nibashan / Nibashan, Yingjing Xian, Yaan Shi, Sichuan Sheng, China

累代:WF2

羽化日:2019年12月


ちなみにこのような名称の山があるのかは不明です。一応四川省雅安市滎経県にそのような地名があることは確認しましたが…。



■2020年1月6日 ペアリング


500ccボトルに適当に水苔を敷いてペアリングを実施。

ここは普通のオニクワガタと同様に、すぐにペアリングできました。


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念のため1日同居。


■2020年1月7日 産卵セット


一般的なオニクワガタのセットにて組みました。

おそらくオニクワガタは全種このセットで大丈夫です。


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セット日:2020年1月7日

ケース:小ケース

材:柔らかめのクヌギL材

マット:無添加1次発酵マット

水分:普通

温度:20度


材はボーリン用にとっておいた、柔らかめでかつやや太さのある非常に品質の良いものを使用しました。

クラッペリッチの反省を生かし、加水もほどほどに、マットも適度な加水にとどめました。

オニクワガタ全般としてやや低温の方が、寿命も産卵も安定するので、温度はいつも通り20度。

寿命が短い種なので、1つのミスも許されない1発勝負のセットです。



■2020年5月10日 割り出し


実は3月半ば頃から幼虫が見えていましたので、少し安心の割り出し。

オニクワガタ全般、産卵自体はほぼほぼ材にしますが、幼虫は溢れてマットにいますので、1.5~2ヶ月程度経っても幼虫が見えない場合には、失敗していることが多いです。


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出ますね。


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材の中にも多くいます。


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芯の方にもいました。

サイズもちょうど良いぐらいですね。


結果は、21頭

やや少ないですが、累代はできそうな数ではあります。この手の虫は成虫で放出できないので(寿命が短いので販売しにくい)、幼虫で放出するのが得策なのですが、数が少ないのですべて飼育します。


本種ですが、飼育している人は知っていますが、おそらく国内で飼育している人数は5人程度と思われますので、絶やさないように飼育したいですね。できれば野外品を入れてほしいところです。



■飼育まとめ


ということで、幼虫から始めて幼虫を得られたということで、無事に1サイクル。

飼育の感想です。


●親生体の入手

野外品が入ったら入った日に連絡して買う。それしかないかと。

オークションはここ数年で1ペアだけ見ました。標本はよく出てます。

幼虫での販売も今後はあまり期待できないと思います。野外品の入荷を祈りましょう。


●産卵について

通常のオニクワガタと同じで大丈夫です。

特にひねったことをせずとも、そこそこ柔らかめの材と温度さえキープできていれば産卵は難しくないと思います。やはりネックはキンオニの飼育記で散々書いた寿命。羽化時期を何としても合わせるのが大事です。


●幼虫飼育について

マットは無添加しか使いませんでしたが、今回はキンオニと同じレベルの添加マットを使用しての飼育を考えています。飼育で40ミリを出したいですね。

あとは温度にさえ気を付ければ問題なし。


過去にアルクアトゥスオニ(Prismognathus arcuatus)というのが入荷しており、累代も成功しているのを知っているのですが、どなたか飼育している人いませんかね。





メイン飼育種の一つ、ネブトクワガタの記事です。

最近手いっぱいになってきたので、ネブトは昔みたいに国産メインにしようかなと思うこの頃。

正直手が回っていなくて、一部の種類はケース内で自動累代してます。プラティオドンのようにスペースをとるネブトは厳しいかもしれません。


マイナーなインプリカートゥスネブト(Aegus implicatus)の飼育についてです。



■インプリカートゥスネブトクワガタについて


ご存じの通り、スラウェシ島に生息する中型のネブトで特徴的な形状からご存知の方も多い(?)と思います。

似た名前でインプレッシコリスネブト(Aegus impressicollis)がいますが、近縁種ではあるものの別種です。名前似てますよね?

その他にスマトラ島のカズヒサネブト(Aegus kazuhisai)やボルネオ島のコバヤシネブト(Aegus kobayashii)あたりが近縁種と考えられているようです。

そういえば、以前スラウェシ島の野外品インプリカートゥス発注したらインプレッシコリス届いたことありましたね。スラウェシ島にインプレッシコリスいないんだけどなぁ。


和名:インプリカーゥスネブトクワガタ

学名:Aegus implicatus Nagai, 1994

分布:スラウェシ島/Sulawesi island

サイズ:♂21.8~41.0ミリ、♀19.0ミリ

珍品度:少ない☆☆☆☆


大図鑑による特徴は「♂の頭部の複眼後方側縁の四角形状の突起は前方が直角に角ばり、後方は斜めの裁断状、大あごは細長く、前方で強く湾曲し、基部付近の内歯は側方に棒状に突出して先端はやや二又状、中央の内歯は先端が丸味をおびる長い三角形状で、やや斜めの前方を向いて突出し、大きく上反する。」とあります。(「世界のクワガタムシ大図鑑」,2010,藤田宏 P328-329より抜粋)


アチョスネブト等と異なり、現地ではそんなに珍品ってことはないと思うのですが、ネブトとしては入荷は少ないです。分布は北部から南部まで幅広く生息している模様。スラウェシ島では最大のネブトです。

ちなみに、近頃スラウェシ島からははフロンタリスネブト(Aegus frontalis)やスクルプティコリスネブト(Aegus sculpticollis)等の名義で入荷がありますが、残念なことにあれらはほとんど同定するとプンクティトラックスネブト(Aegus punctithorax)になります。

セミキルクラリスネブトも最近は入荷がないですね。


スラウェシは広いですからね。イソガイネブト(Aegus isogaii)やヤスミンネブト(Aegus jasmini)のようなほとんど得られていない珍品ネブトもまだまだ眠っているのかもしれません。


ちなみにこの手のネブトは野外品であっても割と産卵率は良いです。

ネブトに多い、いわゆる外れ♀が少ないといった方がいいかもしれません。現地での採集方法は不明ですが、材割ではない気がします。


1994年の記載と比較的新しいネブトですので、初入荷がいつかどうか手元の資料を漁って調べていたのですが、残念ながら見つかりませんでした。

ただ、スマトラのフォルニカートゥスネブトやパラレルスネブト、タイのアンプルスネブトあたりが解禁前の99年以前からかなり入荷していたのと比較して、スラウェシのネブトはあまり入荷してないですね。


今回飼育したのは、パロロから得られたF2の個体です。

特徴の良く出た良い個体でした。



■2019年5月 親個体入手


某所より親個体を入手しました。

野外品はやや高かったので、今回はやや価格も落ち着いている飼育品にしました。


個体の紹介。


インプリカーゥスネブトクワガタ

Aegus implicatus Nagai, 1994

産地:インドネシア共和国 スラウェシ島 パロロ・パル / Palolo・Palu, Central Sulawesi, Indonesia

累代:(W)F2

サイズ:♂31ミリ、♀19ミリ

羽化日:2019年3月上旬


探しましたが、以下の写真以上の写真は見つかりませんでした。

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サイズはそこそこあるので、特徴はよく出ている個体だと思います。


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特徴的な内歯を持っているので、このサイズなら同定を間違うことはないですね。


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こちらが♀。


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比較的特徴があるので、区別は難しくないような気がします。

ちなみに、冒頭で記載したインプレッシコリスネブトとの比較をしてみました。


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うん、全然違います。

ちなみにこちらのインプレッシコリスネブトは流通の多いパラワン島亜種(ssp. patrici)ではなく、ボルネオ亜種(ssp. ratcliffei)です。


■2019年6月11日 セット


その前にペアリングと称してプリンカップで同居させていました。

適度に間を空けて6月にセットへ。


セット日:2019年6月11日

ケース:1400ccボトル

材:なし

マット:Nマット

水分:やや多め

温度:23度



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時間がなくて適当なセットになりました。



■2019年10月30日 割り出し


存在を忘れていましたが、割り出しを行いました。


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この写真と割り出したという記録はあるのですが、なぜか頭数の記録がなし。

おそらく10頭前後だったかと思います。

少ないな〜。ちゃんと記録取ってないのもいけてないですね。


そのまま小ケースで多頭飼いをすることに。

温度は20度、マットはUベースにライトlevel3をブレンド。



■2020年4月5日 羽化・セット


ケース内で自力ハッチしている個体が多かったので、回収しました。


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いやー、小さい。


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小ケースでそれほど数も多くなかったので、1頭あたりのスペースもそれなりにあったと思いますが、やはり餌が合っていなかったということでしょうね。

ちなみにやや赤みがかって見えますが、実際赤いです。テネラルではないです。


羽化してきた♂はほとんど25ミリ程度の小型でした。


こうして小型化リフレインが進んでいくんですよね。反省。



とりあえず、活動開始していたので、3♂6♀を複数まとめてセット。


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セット日:2020年4月5日

ケース:小ケース

材:なし

マット:幼虫飼育(U+ライト3)+N

水分:やや多め

温度:20度


低温セットなのはスペースの都合です。

23度帯が空けばそちらに移動予定です。



■飼育まとめ


●親個体の入手について

最近はオークション等でも飼育個体が出回っていることもあるので、その辺での入手が無難でしょう。今年はどうなるかわかりませんが、年間数ペアは野外品も入りますので、そちらでの購入も可能です。値段は野外品であればペア1万円ぐらいです。飼育品は3,000円〜ぐらいかと。


●産卵について

通常のネブトセットで問題ないと思います。あんまり産ませられていないので大したことは言えませんが、飼育自体は簡単な部類になると思います。


●幼虫飼育について

幼虫は強いですが、ご察しの通り、大した結果も出ていないので、何も言いません。


今シーズン、外国産ネブトは少なめで、今のところ活動しているのはクーランとプラティオドンぐらい、あとはラムリーをセットしてるぐらいで、他は休眠中や幼虫です。

国産はほとんどセットして放置してます。


記憶が消える前に記事にできれば良いですが。





ホウライミヤマ飼育記①

本当に忙しく更新できていませんが、本日はホウライミヤマクワガタの飼育記事です。

最近は流通が少なく、貴重な種になっている気がします。



■ホウライミヤマについて


ホウライミヤマは台湾に生息する小型~中型のミヤマです。

過去から入荷はありますが、近年表立った入荷は少なく、飼育品の流通もかなり少ない種類の一つです。(少なくとも去年はオークションでも見かけなかったような気がします。)


形状は台湾に生息するクロアシミヤマやクリイロミヤマに非常によく似ています。

上記いずれも飼育していますが、形状が非常に私好みの種類であります。

今年出版された「BE-KUWA 75号 世界のミヤマクワガタ大特集!!」(2020年、むし社)によると、日本のミヤマクワガタと同じグループに属すると考えられるそうです。

学名の由来は故・黒澤良彦博士ですね。


和名:ホウライミヤマクワガタ

学名:Lucanus kurosawai Sakaino, 1995

分布:台湾中部

サイズ:♂27.0~45.0ミリ、♀24.0~30.7ミリ

珍品度:少ない☆☆☆☆


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今回飼育した個体。


分布としては、台湾北部の新竹県から南部嘉義県の阿里山まで広く生息しているようです。


以前より入荷している産地は、台湾中部に位置する台中市の大雪山の個体が多いですね。今回ブリードしたのもこちらの産地です。


大図鑑によると、『クリイロミヤマに似るが、より小型。♂の体は明るい褐色で、体表面には金色の微毛が密生する。頭部の耳状突起の張り出しはやや弱く、大あごはゆるやかな弓状に湾曲する。腿の節の基部には黄褐色紋があり、頸節は黄褐色〜褐色。♀の体は細長く、上翅はやや褐色がかり、脚は細長い。』(世界のクワガタムシ大図鑑,2010,藤田宏,P94参照)とあります。




調べたところ、台湾5大山脈のうちの1つである大雪山山脈で標高1,800m~2,996m、面積は39,630,000平方メートルと、かなりの広さと高さを誇るようです。平均気温は15~18℃とやや涼しめ。ミヤマの生息環境としてはよさそうですね。

採集は灯火がメインとなるようです。


入荷ですが、2019年は野外品は私の知る限り2ペア(うち1ペアは私のもとに)、台湾からの飼育品の入荷は3ペア(うち1ペアは私のもとに)ぐらいの入荷だと思います。他にもあるかもしれませんが、表には出てきていないと思います。


前置きは終わりにして早速飼育記事に。



■2019年5月~6月 親生体の入手


今回は入荷が少ないミヤマですので、事前に依頼の元、飼育品と野外品をそれぞれ別ルートより入手しました。


飼育個体は台湾のブリーダーからのWF1個体の入荷です。野外品は同産地の個体で、こちらも台湾のとある採集家の採集個体となります。

入荷が少ない種についてはある程度事前に入手の目処をつけておかないと手に入れるのは難しいかもしれません。


野外品は小さな個体でしたが、飼育品は立派な♂でした。

♀は正直クリイロやクロアシと区別するのは難しいです。


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上で既出の飼育品♂。サイズもありカッコ良い。

色味はクリイロやクロアシと比較してかなり赤みが強く出ています。


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裏側。もちろん新成虫などといったことはなく、ブリード直前の個体です。


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こちらが♀。


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真上ビュー。

動き回るのでナンセンスな写真に。


いつも思うんですけど、このタイプのミヤマって、♂のサイズに対して♀がかなり大きくなります。

なんででしょうね。


次に野外品。

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小さいですが、野外だと普通サイズですかね。



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真上ビュー。きれいな個体でした。


なお、♀の写真は見つからず…。無念。



ホウライミヤマクワガタ

Lucanus kurosawai Sakaino, 1995

産地:台湾和平区大雪山

累代:WILD、WF1


ということで今回野外品は持ち腹にてセット、飼育品は普通にペアリングしてからセットをすることに。



■2019年6月23日 ペアリング


活動を開始してから時間がたったので、飼育個体のペアリング。

交尾意欲は旺盛な種なので、無事にペアリングを目視。



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セットに移ります。



■2019年6月24日 産卵セット


翌日2♀ともにセットに投入。

セット内容は同じですが、野外品は中ケース、飼育品は小ケースを使用。

気分で材を埋め込みました。


セット日:2019年6月24日

ケース:小・中ケース

材:適当な材(加水なし)

マット:N+黒土+lucanusマット

水分:普通

温度:20~21度


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時間があれば試し割したいと思いつつ、いったんここで終了。



■2019年7月17日 試し割り


野外品のセットの方を試しに割ってみたようです。

最近は卵で割り出す機会がめっきり減っているので懐かしい感覚です。


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結果は、卵が21個

♀単品追い掛けなしでのセットだったため不安もありましたが、無事に産んでいたようです。

卵の状態も良く孵化は問題ないでしょう。

この手の種類のミヤマは採卵してもほとんど孵化率が落ちないので、気が楽です。

(ちなみに最近何かと話題のPseudolucanus系は孵化率が非常に悪いです。)


そのままセットに戻し終了。



■2019年10月22日 割り出し


いつも通り随分と時間が空いてしまいましたが、時間ができたので割り出し。

小ケースのセットの側面からは大量の幼虫が…。


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結果は、野外品♀が4頭、飼育品は45頭ぐらいでした。

1度目の割り出し分はすべて孵化しましたので、合計で約70頭。

数としては十分ですね。


少しだけイベントにて販売、委託品としてお店に置かせてもらっていますが、ほとんどすべての幼虫は手元で管理しています。



■2020年2~3月 ボトル投入


本当に忙しくて、一部の幼虫はプリンカップ、もしくは産卵セットのまま放置していましたが、ようやくすべての幼虫を800ccボトルに投入しました。

使用するマットは様々ですが、この手のミヤマはあまり生オガ系にマッチしないことが多いので、別の系統のマットも使用しています。

やはり飼育する以上は40ミリアップは必須だと思いますので、大きな個体を出したいですね。


早い個体は秋口から羽化してくると思います。


■飼育まとめ


まとめというか感想というか、いつものです。


●親生体の入手について

これは最近の情勢を考えると結構厳しいですね。コロナ云々関係なく、野外品がまとまって入ってくることは少ないように思います。去年のクリイロ原名のように、何気ない顔でショップに並んでいることもありますが、少なくともここ2~3年はあまり見ないです。

欲しい方は根気強く探しましょう。


●産卵について

野外品、飼育品ともに癖もなく、簡単に飼育できるミヤマです。

大きさもそれほどでないことから、スペースも大型ミヤマほど必要になりません。幼虫飼育は初めてなので、これからどうなるか見ものですね。


以上。




まず初めに。以下の記事は私個人の考えがかなり含まれており、あくまで私自身が今回の書籍に踏襲すべきであると考えているだけで、それを強制するようなことではありませんので、あしからず。

走り読みの部分もあるので間違いや解釈違いがあればご指摘頂けますと幸いです。



本業が猛烈に忙しく大変ご無沙汰しておりますが、4月17日にBE-KUWAの最新75号(ビー・クワ75号)が発売されました。

なお、専門店以外の本屋や一部電子書籍での発売日は4月23日です。

持ってない人は今すぐ書いましょう。もちろん通販で。


今回は「世界のミヤマクワガタ大特集!!」ということで、前回のミヤマ特集は23号なので13年、2010年の大図鑑の発売より10年が経過しております。そのため、発売前より多大な期待を寄せておりまして、さらに内容を拝読した結果、これは紹介せざるを得ない内容であるということで、今回は記事を更新しております。

ちなみに23号の前のミヤマを特集したBE-KUWA 11号は実質「ヨーロッパミヤマ特集号」です。今読んでも非常に興味深い研究データや、各国の個体差が詳細に記載されているとてもためになる本なので、ケルブスを飼育している人は全員買うべき。リアルタイムで購入してましたが、当時は子供ながらに良さがわかりませんでしたが、今になって良さがとてもよくわかります。いずれ記事として紹介したいですね。


正直、オオクワガタばかりが目立つ最近の号の中で、久しぶりにビークワの真髄をみました。

現存するLucanus属に関する図鑑としては、間違いなく世界で一番種類数を網羅していますたぶん


まず、今回の目次が約2週間ほど前に公開されましたが、その時点で多大な期待を感じた点が2つ。


・図鑑の監修が佐藤氏である点

・飼育記事の執筆者が齊藤氏である点


特に前者に関しては、近年の種名・亜種名の整理に大きく意見を持たれ、現在日本でLucanus属について最も見識を有している方の一人なので、これを機に、一つ日本におけるLucanus属の総整理が期待できると感じていました。


以前チベットミヤマの飼育記において記載したことがありますが、藤田氏の大図鑑が刊行された2010年以降もLucanusの新種発見や、分類の整理は甚だしく進められている一方、国内での整理状況は混迷を極めており、一度大きく整理されるべきだと考えておりました。

そんな中、今回の図鑑は、2010年の大図鑑の内容を踏襲しつつ、最新の(主にHuang Hao & Chen Chang)研究を踏まえたうえで、今後の国内のLucanus属の基盤となる整理をしております。


これからはこのBE-KUWA75号の図鑑がLucanusを語る上でのスタンダード。

個人的には、生き虫屋も標本屋もこの図鑑を目安にすべきと考えています。

※あくまで個人的な意見です。


分類だけでなく、和名も現地読みに近い形に修正されてます。(例:ウェムケンミヤマ→ヴェムケンミヤマなど)

和名もなるべくこちらの書籍に合わせていきたいですね。


で、まずは表紙。

シマウマを想起させるような仕上がり。いやもうシマウマにしか見えない。

並ぶLucanusは左からヨーロッパ(アクベシアヌス)、ミヤマ(原名)、プラネット(原名)、カンター(原名)とLucanusを代表する4グループの顔。

土屋編集長のチョイスなのかわかりませんが、秀逸ですね。



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次に目次の抜粋。


4 世界のミヤマクワガタ大特集
6 世界のミヤマクワガタ大図鑑 佐藤 仁
36 標本商下っ端社員のベトナム出張手記 櫻田 馨子
44 世界のミヤマクワガタ飼育法 齊藤 巧
54 虫のためなら、どこへでも! 野澤 亘伸
62 発表! カブトムシレコード

66 カブトムシレコード一覧表
68 樹液オオクワ採集 三匹の♂さん ふじたいら

72 80mmブリーダーから学ぶゼロからはじめる巨大オオクワガタの育て方 基礎知識編 チョネ
80 能勢・川西・久留米 3大大型血統共同研究室! 第二弾-大型血統3産地の兄弟個体20頭ずつを、別環境で飼育したらどうなるのか?-
86 オオクワガタの性比を探る! 土屋 利行 & チョネ

88 山梨オオクワ採集 台木の上にも3年! 長坂 敬司
90 21世紀版 クワガタムシ飼育のスーパーテクニック 小島 啓史
98 コルリクワガタの新芽採集記 Johnnyおじさん@小美濃正年
102 HirokAのヘラ2漫遊記 河野 博史
106 オオクワブレーク ビークワ版 ワイドカウ

114 編集部からのお知らせ
118 読者と執筆者と編集部をつなぐ井戸端会議室 び~くわ横丁
126 クワガタ用語の基礎知識
127 編集後記


ミヤマ関連項目は前半のみですので、該当部分のみ簡単に解説。


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エラフスミヤマ(Lucanus elaphus)。最近羽化した極小の個体。

ヨーロッパミヤマの流れを汲むものの、近縁種は不明という、北米大陸の神秘の種。



■世界のミヤマクワガタ大図鑑について


何を隠そう、1994年の『世界のクワガタムシ大図鑑』(1994、水沼哲郎・永井信二)では48種、前回の『BE-KUWA 23号』(2007、むし社)のミヤマ特集では79種、かの『世界のクワガタムシ大図鑑』(2010、藤田宏)の掲載数は98種に対して、今回の図鑑は2010年の大図鑑の約1.25倍にあたる133種+26亜種を網羅した歴史的Lucanusの大図鑑となっています。

紙面の都合上プレート数で劣るのは残念。もっと図鑑にページ割いてほしい。切実。


なお、図鑑には私の好きなNoseolucanus属(ゲンシミヤマ属)も併せて掲載されています。なお、ゼンゲンシミヤマの姿は誌面初登場と見せかけて、実は『BE-KUWA 69号』のチベット採集記の中で登場してます。名前だけなら50号のインドのクワガタ特集でも出てます。

ちなみに、この属のデンティクルスゲンシミヤマに関して、すでに今年に入ってから15♂ほど羽化してきていますが、最大は28mmとこの図鑑に掲載されている28.8mmには少し及ばず。30mm頑張ればいけるのかな。


スタートからダビディスミヤマをはじめとしたグラキリスミヤマグループから始まり、ヨーロッパミヤマグループ(こちらは初見が多数)など、素晴らしいラインナップです。台湾のミヤマも全種網羅されており、クリイロやクロアシもきちんと亜種分けされています。


内容は多すぎてすべて説明するには枚挙に暇がないため、簡単に本書での整理を抜粋。



①種類の整理


・チベットミヤマ(Lucanus tibetanus

最も大きな変更があったのは本種と思っています。

簡単にまとめると、従来のベトナム亜種(ssp. katsurai)及び雲南省中北部から記載されたLucaus preudosingularisssp. furciferにまとめられ、本亜種のシノニムに。

同時に以前よりフルキフェルミヤマ(Lucanus furcifer)として知られていた個体は、チェンミヤマ(Lucanus cheni)と名称が変更されることに。

この結果、我が家のベトナム北部産のチベットミヤマはフルキフェルミヤマへと名称を変えたのでした。

また、雲南省北西部の貢山(gongshan)から記載された個体は、ssp. singularisにまとめられ、Lucanus gennestieriの名称で知られていた種は、ssp. singularisのシノニムとなりました。

なお、gennestieriの名称では2018年に1♀入荷があり、ssp. singularisについても2019年に1ペア生体での入荷があります。これ本当は欲しかった。

結果、チベットミヤマは4亜種に整理されました。なお、原名亜種とssp. isakiに関しては変更ありません。


・フェアメイルミヤマ(Lucanus fairmairei

次は長らく論争のあったフェアメイルイヤマ。これはすでに整理されていたというか、いろいろな過程があったかと思いますが、簡潔にいうと、従来日本の図鑑において、シセンミヤマ(Lucanus szetschuanics)とされていた四川省から得られていたヒメミヤマ系の個体群はフェアメイルミヤマ(Lucanus fairmairei)のシノニムとされました。一方で、従来フェアメイルミヤマ(Lucanus fairmairei)とされていたミャンマーの種類は名前がなくなりましたので、2016年にドイツのシェンクによりチンヒルミヤマ(Lucanus chinhillensis)と整理され、さらに、四川省から湖北省、湖南省等から得られていたヒルデガルダミヤマ(Lucanus hildegardae)の名称で知れらる種類はシセンミヤマ(Lucanus szetschuanics)のシノニムとされ消滅しました。

すごいわかりにくいですね。ちなみに最近四川省から入荷のあるミヤマはフェアメイルミヤマ(Lucanus fairmairei)で、ミャンマーのチン州から入荷のあるミヤマはチンヒルミヤマ(Lucanus chinhillensis)です。シセンミヤマ(Lucanus szetschuanics)の入荷は聞いたことはないですが、sp.として入ってるかもしれません。


・チョウセンミヤマ(Lucanus dybowskyi

これは従来日本の図鑑では日本のミヤマクワガタ(Lucanus maculifemoratus)の亜種として記載されることが多かったですが、本書においては、独立種として記載されました。

それに伴い、タカサゴミヤマについてもチョウセンミヤマの亜種としての位置づけとなりました。Lucanus dybowskyi tiwanus。

一方で、大図鑑で独立種としていたラサミヤマ(Lucanus lhasaensis)については、本種チョウセンミヤマの亜種(Lucanus dybowskyi lhasaensis)としています。


・ラティコルニスミヤマ(Lucanus laticornis

飼育してるので個人的に気になっただけですが、以前のBE-KUWA11号や23号において、ヨーロッパミヤマ(Lucanus cervus)の亜種の1つとされていたラティコルニスミヤマ(Lucanus cervus laticornis)ですが、特徴が顕著ということで、この度独立種(Lucanus laticornis)に格上げとなりました。

大きくならないだけでなく、触覚など一目でわかる特徴がありますので、納得の分類。

また、ヨーロッパミヤマ(Lucanus cervus)についてはポントブリアントミヤマ(Lucanus pontbrianti)など、従来ヨーロッパミヤマの型の範囲に収まっていたものを、独立種としたものもいます。ちなみにヨーロッパミヤマ(Lucanus cervus cervus)の型については、依然として整理は進んでおらず、状況に変化はあまりないようです。これでヨーロッパミヤマ(Lucanus cervus)の亜種は5種となります。


なお、「Stag Beetles of China III 中華鍬甲[参]」(Huang & Chen, 2017)でデランミヤマ(Lucanus detain)の亜種とされたサパヒメミヤマ(Lucanus fukinukiae)ですが、こちらはそのまま独立種とされました。これには納得。というか安心というか。そもそもデランミヤマ自体の記載が曖昧な面もあるようですが、この辺は種の記載時に特徴の出にくい小型個体を使用しているのが原因なんだとかそうじゃないんだとか。

そういやサパヒメミヤマっぽいミヤマ(多分数種類いた)も去年飼育しましたが、産みませんでしたね。


大きなところだけ簡単にまとめましょう。


●種名変更

・チベットミヤマ(Lucanus tibetanus katsurai)→チベットミヤマ(Lucanus tibetanus furcifer

・フルキフェルミヤマ(Lucanus furcifer)→チェンミヤマ(Lucanus cheni

・従来のフェアメイルミヤマ(Lucanus fairmairei)→チンヒルミヤマ(Lucanus chinhillensis

・従来のシセンミヤマ(Lucanus szetschuanics)→フェアメイルミヤマ(Lucanus fairmairei

・ヒルデガルダミヤマ(Lucanus hildegardae)→シセンミヤマ(Lucanus szetschuanics


●亜種名・学名変更

・チョウセンミヤマ(Lucanus maculifemoratus dybowskyi)→チョウセンミヤマ(Lucanus dybowskyi dybowskyi

・タカサゴミヤマ(Lucanus maculifemoratus tiwanus)→タカサゴミヤマ(Lucanus dybowskyi tiwanus)

・ラサミヤマ(Lucanus lhasaensis)→ラサミヤマ(Lucanus dybowskyi lhasaensis)

・ラティコルニスミヤマ(Lucanus cervus laticornis)→ラティコルニスミヤマ(Lucanus laticornis


②和名の整理

従来の和名から変更されたものがいくつかあります。

ウェムケンミヤマ→ヴェムケンミヤマ

ハンスミヤマ→ハヤシミヤマ(これは和名の変更というよりもより正確な学名に戻ったという話ですが)

ミンギアミヤマ→ミンイミヤマ

ボアローミヤマ→ボワローミヤマ

チンヒルエンシスミヤマ→チンヒルミヤマ

ウーイーシャンミヤマ→ウーイーミヤマ

クラッペリッチミヤマ→クラッペリッヒミヤマ


その他、和名のなかった中国名由来のミヤマの和名が整理されました。ホーウンジャーミヤマ(Lucanus hewenjiae)、ジュシャンミヤマ(Lucanus zhuxiangi)、ジャンビーシェンミヤマ(Lucanus zhanbishengi)、リュウウェーミヤマ(Lucanus liuweii)、リュウイェーミヤマ(Lucanus liuyei)、リュウペンユミヤマ(Lucanus liupengyui)など。

この辺のミヤマは中国名の発音を踏襲するので、非常に読みにくいですが、この読み方で統一すれば良いんじゃないかと思います。あとはショップがちゃんとこの表記で販売してくれれば。


その他、2017年にこちらの監修を行なった佐藤氏によって記載されたグラディウスミヤマ(Lucanus gradivus)や、2018年に記載されたばかりの台湾の新種、チェンユアンミヤマ(Lucanus chengyuani)も初めて日本の図鑑に和名とともに登場。ミクラミヤマと同じパリーミヤマグループに属しています。

グラディウスの学名、gradiusじゃなくて、gradivusなんですね。


簡単にまとめるとこんな感じですが、今後はこの分類をスタンダードと私は考えますので、これから過去の記事を含めて、全ての和名、学名はこれらをもとに修正します。(可能な範囲で)


一つだけ残念なのは、上述した通り、誌面の都合上、プレート数が1種類に対し1〜3点と少ないこと。ミヤマは個体変異がかなり大きな種ですので、代表的な個体が表示されていますが、本当はもっとたくさんの個体を並べて見てみたいですね。是非世界のミヤマ大図鑑なるものを執筆していただきたいものです。



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先日羽化したヴェムケンミヤマ。50ミリ台後半とやや大きめ。

飼育は容易な部類。



■世界のミヤマクワガタ飼育法について


この記事は世界のミヤマクワガタの飼育に精通する齊藤氏が記載した、唯一無二の飼育法です。過去に記載のなかったヒメミヤマを含め、国内で流通するほとんどのミヤマの飼育方法が難易度別に記載されているという恐ろしさ。読み応えもあり、非常にわかりやすく、こんな詳細に飼育方法を解説した書籍は過去にありません。また、所々にかなりマニアックな内容も散りばめられています。蛹の考察とか卵の考察とかすごいですよ。


ただし、難易度分けは個人差があるのと、A~Dの4段階でのざっくりに分けていること、そして、そもそも普通に低温で飼育できる環境が前提での分類であることをお忘れなく。そのため、多くのミヤマが一番難易度の低い、Aに含まれています。

ちなみに、ご本人様とは話したことややりとりさせて頂いたことが何度かありますが、レベルが違いすぎます。

私の飼育レベルが初心者の3とすれば、此のお方のレベルは40以上。ケモンで言えばマサラタウンとグレンタウンぐらいのレベル差があります。





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先日羽化したクラーツミヤマ(原名亜種)。2017年のWILDからブリードしましたが、予想より早く羽化。ヒメミヤマ系の中でも飼育は簡単と思われます。かっこいい。



残念ながら、この記事の内容はこちらで紹介することはできませんが、是非買って読んで頂きたい内容です。

これも執筆者ご本人様に直接お聞きしたことですが、元々は16ページも記載していたものを、誌面の都合上8ページまで削ったそうです。それであの内容の濃さです。


これを読んで少しでもミヤマクワガタの魅力に気づいてくれる人がいると良いですね。


あ、あと今回の号、ベトナムの採集記も大変面白い内容になってますので、必読ですね。


ということで、この本を持ってない人も、まずは、本を買うことから始めましょう。(購入はこちらから)

業界の繁栄を維持するのは一人一人の小さな行動からですよ。








以前チチジマネブトの飼育記事でも少し言及しましたが、私の中で国内最高峰といえばこのクワガタです。

満を持しての登場、オガサワラネブトクワガタの飼育記事となります。

まずは軽い導入から。


■オガサワラネブトクワガタについて


オガサワラネブトクワガタ(Aegus ogasawaraensis)は、日本の小笠原諸島にのみ生息する固有種で、母島に生息する種を原名亜種(Aegus ogasawaraensis ogasawaraensis)として、父島、兄島、弟島に亜種チチジマネブト(ssp. chichijimaensis)が存在しています。

日本全国(本州~南西諸島)に分布するネブトは大陸のラエビコリスのように、大陸のネブトクワガタをルーツとするのに対し、本種はこれらとは全く別のルーツを持つと感じさせられます。見た目だけでなく生態も大きく異なり、類似する外見的特徴を持つネブトは私の知る限りほとんどいません。

おそらく東南アジア系もしくはオセアニア系のネブトをルーツにするものと個人的には考えています。

あくまで個人的な考えです。根拠はないです。実際、東京都といっても、南西諸島並みに離れていますので。


和名:オガサワラネブトクワガタ(原名亜種)

学名:Aegus ogasawarensis ogasawarensis Okajima et Kobayashi, 1975

分布:小笠原諸島(母島)

サイズ:♂16.0~26.0ミリ、♀13.0~20.0ミリ

珍品度:少ない☆☆☆

飼育レコード:28.7ミリ



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大図鑑の解説によると、『ネブトクワガタに比べて、♂♀は共に体は寸づまりで厚みがあり、光沢が強い。♂の頭部前縁中央の湾入部は幅が狭く、複眼後方の側縁は丸味をおびてごく弱く突出する。』(世界のクワガタムシ大図鑑、藤田宏、2020年、P351)とあり、明確に違う種であることがわかります。そもそも以前は日本のネブトがすべて大陸のラエビコリスネブト(Aegus laevicollis)の亜種扱いされていた頃(今でも亜種扱いする説はありますが)から、本種は独立種とされております。なお、父島の個体が亜種とされたのは2000年です。チチジマとの違いは大あご先端の丸みと太さにありますが、判別するのは結構難しいと思います(細くて先端が丸いのが原名亜種、太くて先端が尖っているのがチチジマです)。

ちなみに大図鑑だとチチジマの方が黒味が強く、原名亜種の方が褐色味が強いと記載されていますが、私個人の感想だと、その逆の方が多い気がします。

なお、本種のホロタイプ標本は国立科学博物館にて保管されているそうです。(記載論文では母島産がホロタイプとして指定されているものの、国立科学博物館にて保管されているホロタイプ標本のラベルはなぜか父島になってるらしいです。)


余談なんですけど、「チチジマ」に対して、原名亜種を「ハハジマ」ってカタカナ表記する場合もあるんですが、個人的にはあまり好きじゃなくて、「オガササワラネブト」もしくは「オガサワラ原名」とかって呼んでほしいですね。子供の頃からの感覚的な問題でそんなに意味はありませんが何となく違和感があるので。



■生息環境について


そもそも小笠原諸島には本種を含めても、固有種のオガサワラチビクワガタ(原名亜種、島亜種)の2種類しかおらず、独特の生態系を有する島であることは周知の事実です。

現地では湿度の高い樹林におけるリュウキュウマツ等の赤腐れの倒木より発見されるとのことです。また、本土のネブトのように樹液に集まるかは不明(おそらく来ない)で、材採集が一般的な採集方法となるようです。

小笠原諸島は東京都心から南に約1,000km離れた島であり、温暖多湿な海洋性気候です。緯度的には沖縄本島と同じぐらいですね。

年間の年間の平均気温は約23度、最も気温の低い1月~2月においても平均気温は18度前後と非常に温暖な気候となっています。そのため、現地での活動時期は特に決まっていないものと考えられます。




■採集と保護について


ご存じの通り、小笠原諸島は2011年に日本で4番目の世界自然遺産に認定されたことから、父島、母島の集落地及び農業地域を除いてほぼ全土が国立公園として指定され、動植物の採取について、厳しい制限がかけられております。(父島、母島のすべてではありません。)

以上より、本種を合法的に採集することはほぼ不可能とされております。


詳しくは東京都小笠原支庁のHP(https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/07ogasawara/nature/summaryofpark.html)をご参照ください。


なお、母島への渡航手段は現状、東京都の竹島桟橋からほぼ週1で運行されている「おがさわら丸」にて父島に約24時間かけて移動した後、父島から「ははじま丸」にて約2時間かけて母島に移動する以外の方法はありません。1タームでの最低滞在期間は6日間ですが、うち2日は船内泊となりますので、活動できるのは実際3日程度となることが通常のようです。

父島に空港を作るなんて言う案も出ていますが、調べた感じですと2018年以降具体的な話が出ているのかは不明で、実現しても20年近く先になるのではないかと考えられます。


一度行ってみたいですが、長期休暇を取得する必要があるので、時間的に少し厳しいものがあります。


ちなみに、国内で出回っている母島産の本種は、多くが「桑ノ木山」と書かれていますが、実際そのような名前の山があるわけではなく、母島の南北を結ぶ海抜170-270mの南西向きの斜面一帯を指していうらしく(「沖村の地名(草稿)」、延島冬生、1982年)、現在は廃道となっているそうです。元々はオガサワラグワの巨木が生い茂っていたことから、このような呼ばれ方をしてたとか。



■こだわりの理由


北関東のとある町に生まれた私にとって、子供の頃に最も憧れたクワガタはオオクワでもヒラタでもなく、ネブトクワガタでした。なぜネブトに憧れたのかはわかりませんが、吉田賢治氏著「クワガタムシ・カブトムシ」(吉田賢治、成美堂出版、1996年)によれば、原寸大のネブトクワガタのフォルム、出身地方では採集できないことなどの理由から、この種に対して強い憧れがあったのだと思います。それに今でこそ国産のネブトクワガタは比較的多く流通していますが、当時は飼育品の流通も少なく、当時の専門店に行ってもなかなか手に入るようなクワガタではありませんでした。

私の住んでいた県には当時3つほどクワガタの専門店があったのですが、いまはどのお店もなくなってしまいました。


私が子供の頃よく読んでいた図鑑の一つに小学館の「学習百科図鑑49  クワガタムシ」(山口進, 1989年)という図鑑があります。この本の末尾には著者である山口氏の採集記や体験記が白黒でまとめられているのですが、その中で山口氏が手探りで小笠原に行く記述があります。

今その本は実家に保管してあるので内容の抜粋はできませんが、バイクで島を周遊し、手探りの中でリュウキュウマツの赤枯れからオガサワラネブトを発見するシーンには当時感銘を受けたものです。

記憶で書いているので間違っていたらすいません。


とりわけ当時からネブトクワガタの中でも本種オガサワラネブトが最も好きなクワガタであり、今でもその気持ちは全く変わっていないわけですが、本種はネブトクワガタのなかでも流通が少ない部類に入り、探すのは困難を極めました。(これは約3年ほど前の話)

2年ほど前から少しずつ飼育品が出回るようになり、今ではそこまで高値ではありませんが、マニアにとっては堪らない種であることには変わりないでしょう。


そんな経緯もありましたが、2年ほど前に飼育できる機会があり、念願叶い飼育をスタートさせたのです。

古い記憶部分は写真がない(もしくは不鮮明)ものも多いですが、一応時系列で記載します。



■2017年12月12日 親生体の入手・セット


当時はネブト知識の割に飼育技術が低く、あまり産ませることが得意ではありませんでした。

とりわけ、このオガサワラネブトに関しては亜種チチジマが少数しか得られないなど、やや鬼門と感じていました。

運よく母島の成虫をペアで入手したのち、さっそくセットをすることに。


セット日:2017年12月12日

ケース:小ケース

材:なし

マット:N+赤枯れ

水分:普通

温度:23度



■2018年2月12日 割り出し


産んでいる気はしませんでしたが、割り出し。


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結果は幼虫4頭でした。


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最近は当たり前のように爆産させていましたが、当時はこんなものです。

期待している種ほど採れないというのは、もはや通説になりつつあります。それにしても懐かしい写真が出てきましたね。



■2018年4月8日 幼虫入手


イベントにて知人より幼虫を5頭購入。

これで別血統の幼虫を追加し、合計9頭での再スタート。

容器は250ccプリンカップ、マットはRTN製のUマットを使用。



■2019年10月 羽化①


自分で産卵させて個体群が羽化し始めました。なお、すべて♂。

補強しておいてよかったと実感。

主に250ccプリンカップでの飼育でしたが、最大は25ミリ前半。このぐらいのサイズがあるとかなり立派です。かっこいい。

ですが、それと同時に飼育レコードの28.7ミリっていうのは本当に大きいと実感。


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上述したように、比較的大あごの先端が丸みを帯びていることがわかります。


ちなみに小型ですが、チチジマは以下。


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気持ち尖ってると思うんですよね。



■2019年2月 羽化②


幼虫で購入した個体群が羽化。こちらはすべて♀。

偏りなんてこんなものです。

最近は、幼虫購入であれば正直4~5頭ぐらいは安心できず、羽化ずれまで考慮して最低でも7~8頭ぐらいは欲しいところです。


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こちらが♀。本土のネブトクワガタよりも厚みがあるのが特徴。


ある意味バランスよく羽化したので、すべて別血統同士で掛け合わせることに。


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■2019年4月10日 ペアリング


写真はないですが、200cc程度のプリンカップで同居。

ネブトは基本同居セットなので必ずしもペアリングをする必要はないのですが、小さいプリンカップに入れておくと簡単に交尾するので、念のため軽くペアリングはしておいた方が良いと個人的には思います。これは結構本当。


■2019年4月25日 産卵セット


♂♀4頭ずついますので、合計4セット組むことに。

私の場合、ネブトは複数♀をまとめてセットすることが多いのですが、今回は敢えての1♀ずつでのセットです。

セット内容自体は普通の国産ネブトと同様。赤枯れなるものは一切不要ですが、一応気になったので1割程度混ぜる、2割程度混ぜる、まったく混ぜないの3パターンを用意。

ケースは定番のボトルです。もうミニケースや小ケースは国産ネブトに関してはほぼ使わなくなりました。多種のネブトの飼育結果から、1つのボトルでMAX200頭~250頭ぐらいは採れることが分かったので、数を採る場合でも大きいケースは不要です。

ただ、割り出し時期を遅らせると徐々に減ります。


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セット日:2019年4月25日

ケース:1400ccボトル

材:なし

マット:N+赤(比率は上述)、もしくはNマットのみ

水分:やや多め

温度:23度


体感的に温度はもう少し高めでもよいですが、我が家の限界値は23度程度なので悪しからず。

あとマットは一切固く詰めることはしません。手で押すぐらいで十分です。



■2019年5月8日 産卵確認


ネブトは側面に卵を産むことは少ないですが、ボトル側面に特徴的なマークが出るので産卵はわかりやすいです。

今回もセット1週間もすれば、下記のような円ができていました。すべてのセットで見えていたので安心ですね。


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■2019年10月~2020年1月 割り出し


時期が空いてしまいましたが、ようやく割り出し。

テンション的に一気にやるのはつらかったので、3回に分けて割り出ししました。


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結果は、以下のような感じ。


10/27:50頭

10/27:76頭

11/4:66頭

1/19:34頭


合計で幼虫が226頭でした。実は幼虫以外にもすでに羽化している個体(極小)も複数いたり、1月分は割り出しが遅すぎてかなり落ちていたので、実際はもっと多く産んでいたと思われますが、ひとまず200頭ほどは確保できたので、累代には問題ないでしょう。

あと結論的に赤枯れは全く不要ということも判明しました。

気持ち的に入れたくなるのはわかりますが、コストもかかりますので、無理に入れなくても良いのではないかというのが個人的な感想です。

体感的にはもっといると思っていましたが、結果としては見込みより少なめに落ち着きました。

とはいえ、鬼門のオガサワラをある程度攻略できたので満足です。



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■Next Goal


次の目標は安定的な累代と大型個体の羽化の2つです。

自己最大個体は25ミリ前半ですが、飼育レコードは28.7ミリとまだ3ミリほどの差があります。このレベルでの3ミリは途方もなく遠いので、地道に近い数値を出せればよいなとは思います。



■飼育まとめ


参考になるかわかりませんが、簡単にまとめです。


●親個体の入手

流通は以前よりも増えましたが、国産ネブトの中では少ない方です。以前からチチジマの方が若干多いですね。母島は2産地ほど出回っていたような記憶もありましたが、実質ほぼ1産地です。ちょっと高いですが、本種を飼育するような方は値段なんて気にしないですよね。

正直国内の多くが同系統なような気がしないでもないですが、血の入れ替えをしつつ、末永くブリードしたいですね。こういう個体は多くの人の手に渡っても、その人が失敗するとすぐに数が減りますので、油断しないことが大事です。自分も含めて。


●産卵について

産卵は上記の通り、国産ネブトに慣れた方なら難しくはないですが、いろいろ気を付けるポイントはありますが、主に①活動時期を見誤らない、②水分設定を見誤らないの2点です。

①は個体によって結構ばらつきがありますので、よく観察するといいと思います。上記の飼育記録を見るとわかると思いますが、羽化してからきちんと管理すれば羽化後半年でも余裕でセットできますし、ある程度羽化ずれしても問題なく産卵まで行けます。②については、少なすぎない多すぎない、迷ったら気持ち多めの気分でやると何となくうまくいくと思います。

マットは深く発酵した無添加もしくは微添加で可能な限り微粒子のマットであれば大丈夫です。今は多くのメーカーが良いマット出してますからね。

ここまで言っておいてあれですが、人にアドバイスできるような立場でもないですし、ネブトに関しては人によってやり方も全く違ったりするので、適当に聞き流して頂いて大丈夫です。


●幼虫飼育について

他の国産ネブトと違いはないです。大型をどうやって出していくかは今後の課題ですね。

工夫しがいはあると思います。



以上、好きな種類なので少し長めに書きました。